PCB(絶縁油)と行政代執行!一般知識対策になるかも?
行政書士試験が近づいて来ましたね。
去年のこの時期、私はストレスとの戦いでした。
法令分野に関しては、かなり勉強してたのでおそらく大丈夫だろうなとは思っていたのですが、一般知識の存在は常に恐怖でした。
もちろん対策したところでどうにかなるものではないのですが、それでもテレビでニュースをチェックして無駄な抵抗をしておりました。
(結局意味は無かったですが・・・。ただし、昨年の試験のようにコロナの問題が出まくったりする可能性もあるため、その年の話題のニュースくらいはおさえておくといいのかもしれません。)
さて、今回の記事ですが、行政書士の法令分野で出てくる、行政代執行についてお話をしていきたいと思います。
私が勉強しているとき、代執行は違法建築の除却などに実行されている程度に覚えてましたが、他にも様々なところで代執行は行われているようです。
今回、私の職業であるビルメンに関わる分野でも代執行に関連しそうなものを1つ発見したのでご紹介をしたいと思います。
(厳密には、ビルメンが代執行と関わることはないですけどね)
定期的にニュースにもなっている内容ですので、一般知識で出題される可能性もあります。
勉強中の休憩にでも、良かったら見ていってください。
行政代執行とは
そもそも行政代執行法とは以下のような短い条文によって成り立っています。
行政代執行法
第一条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
第三条 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
② 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
③ 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。
第四条 代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し、要求があるときは、何時でもこれを呈示しなければならない。
第五条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。
第六条 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
② 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。
③ 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、国庫又は地方公共団体の経済の収入となる。
私は去年の受験生だったころ、記述対策のためこの条文をほぼ暗記してました。
黄色線のところはとても重要です。
簡単に説明しますと、法律等で定められた義務を履行していない人がいる場合に、それを放置することが危険とみなされるなら、行政がその人の代わりにその義務を実行することができる。そして、履行にかかった費用は、その人から徴収することが出来るということです。
PCB特別措置法
今回ビルメンと関係しそうだなと思った部分は、PCB特別措置法になります。
この法律は、PCBという有害な物質の処分方法について定める法律です。
PCB特別措置法という法律の中で行政代執行に関する条文が出てきます。(こちらの条文は覚えてなくて良いです笑)
PCB特別措置法
(改善命令)
第十二条 環境大臣又は都道府県知事は、保管事業者が第十条第一項又は第三項の規定に違反した場合には、当該保管事業者に対し、期限を定めて、当該高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処分その他必要な措置(以下「処分等措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。
2 前項の規定による命令をするときは、環境省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。
(代執行)
第十三条 前条第一項に規定する場合において、高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理上の支障が生ずるおそれがあり、かつ、次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、環境大臣又は都道府県知事は、自らその処分等措置の全部又は一部を講ずることができる。この場合において、第二号に該当すると認められるときは、相当の期限を定めて、当該処分等措置を講ずべき旨及びその期限までに当該処分等措置を講じないときは、自ら当該処分等措置を講じ、当該処分等措置に要した費用を徴収することがある旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
一 前条第一項の規定により処分等措置を講ずべきことを命ぜられた保管事業者が、当該命令に係る期限までに当該命令に係る処分等措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。
二 前条第一項の規定により処分等措置を講ずべきことを命じようとする場合において、過失がなくて当該処分等措置を命ずべき者を確知することができないとき。
三 緊急に処分等措置を講ずる必要がある場合において、前条第一項の規定により当該処分等措置を講ずべきことを命ずるいとまがないとき。
2 環境大臣又は都道府県知事は、前項の規定により処分等措置の全部又は一部を講じたときは、当該処分等措置に要した費用について、環境省令で定めるところにより、当該保管事業者から徴収することができる。
3 前項の規定による費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。
さて、PCBという名称ですが、ビルメン、電気、廃棄物業界で働いてる人しか馴染みのない言葉ではないかと思います。
私の場合、電気主任技術者という試験の勉強をするまで、PCBというものを知りませんでした。
PCBは電験三種の過去問でも頻出ですので、電験を受験する方は特性などを覚えておきましょう。
さて、この法律では、PCB廃棄物を所有する事業者に対して、保管状況等を届出や、指定された期間内に適正に処分する事が義務付けられています。
上記の適正な処分を怠ると、先ほどの13条のとおり行政代執行の対象となります。
私の場合、勤務先のビルにPCBの保管状況を調べるよう通知がきたため、調査をしたことがあります。
調査方法は、設置されている各機器の年式をインターネット上に公開されているデータと照合することで確認できます。
該当する機器があった場合、PCBの処分を専門としている業者に依頼して処分を進めていく流れになるようです。
幸い、私が勤務したことがるビルだと、PCB含有の設備は存在しませんでした。
なお、PCBを電気設備に使用していた可能性があるのは、昭和28年(1953年)から昭和47年(1972年)の期間とのことです。(該当期間内の製造だったとしても、全ての電気設備にPCBが使われたいたわけではありません)
PCBとは
そもそも、PCBとはポリ塩化ビフェニルの略で、人工的に作られた化学物質です。
PCBの特徴
➀水に溶けにくい。
➁沸点が高い。
③熱で分解しにくい。
④不燃性。
⑤電気絶縁性が高い。
これらの特徴が、電気設備の絶縁材料として適しているため、多くの電気設備利用されていたようです。
絶縁材料とは
電気が流れている電線などに直接手を触れてしまうと、感電する恐れがあります。最悪、死亡してしまうケースもあります。
そこで、電線の場合は被覆と呼ばれるカバーで周りを覆って、人が触れても大丈夫なように保護しているのですが、電線は電気を運ぶものに過ぎず、実際に電気を使用している設備にも電気は流れているため、そういった部分も周りと遮断しないと非常に危険です。
そこで、電気を通しにくい素材(絶縁油など)を充填して、電気的に外部と接触しないように保護しています。また絶縁油には冷却効果もあるため、電気の消費によって発生した熱を冷やす効果もあります。
PCBが利用されていた電気設備
➀変圧器(トランスとも呼ばれています。電圧を変換するものです。)
よく電柱の上のほうについているのを目にしているかと思います。
※下記の写真は参考資料ですので、PCBが含有しているわけではありません。

➁コンデンサー(交流の力率を改善する設備です)
一般的には目にすることはないと思います。ビルなどの自家用電気工作物において、受変電室などに設置されています。
※下記の写真は参考資料ですので、PCBが含有しているわけではありません。

③蛍光灯(事業用のもの)の安定器(蛍光灯に流れる電流の調整に使います。LED機器だと不要です)
照明器具の中に入っています。一般的には目にすることはないかもしれません。
※下記の写真は参考資料ですので、PCBが含有しているわけではありません。

ビルメンで仕事していると、上記の設備全てに携わる機会があります。
ビルメン新人で、これからビル管理に携わる予定の方は、PCBという言葉を耳にするかもしれませんので、この機会に覚えておくと良いかもしれません。
もしかしたら含有しているかどうかの調査を頼まれるかも?
PCBの毒性
体内に蓄積されると爪や皮膚への色素沈着や倦怠感、しびれなどが出てくるようです。
PCB廃棄物の代執行の事例
今年(令和4年)2月のニュースで、大阪市の倉庫で保管していたコンデンサーが代執行の対象となったようです。
該当のコンデンサーは、もともと商業施設で使用されていたようですが、所有者が事業を廃業してしまい、こちらの倉庫で保管をしていたようです。
このケースでは、処分する責任がある所有者が廃業で存在しなかったようで、大阪市が代執行による搬出処分を行ったようです。
調べてみましたが、この他にも事例はたくさんありました。
今後
PCB廃棄物は処分しなければいけない期限が設けられているため、今後も保管している事業者で自ら処分をしない事業者に対しては代執行が実施されていくと思われます。
作られた当時は安全だったけど、後に危険性が発見されるって怖いですよね。
こういう事例って他にもたくさんあると思いますが、予測するのは難しいですよね・・。