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ビルの給排水設備ってどうなってるの?現役ビルメンが教える給水方式・受水槽・排水槽の仕組みと管理【未経験者向け】

ビルの給排水設備ってどうなってるの?アイキャッチ
キヨシ

ビルの水道なんて、蛇口をひねったら出てくるだけでしょ?
ビルメンが何かすることあるん?

ヘタ・レイ

家と同じ感覚だと、そう思いますよね。
でもビルの水は、地下の水槽にいったんためて、ポンプで上の階まで送っていることが多いんです。
その場合は、トイレや流しの水もポンプでくみ上げないと外に出せません。
なので、ポンプや水槽に不具合が起きると断水してしまうことがあるんです!

ビルメンの仕事で、空調や電気と同じくらい毎日関わるのが給排水設備です。

「受水槽」「高置水槽」「ポンプ」「排水槽」「トラップ」……と、現場では当たり前のように飛び交う言葉ですが、未経験者や新人ビルメンにとっては、どれが何の設備なのかイメージしにくいですよね。

そこでこの記事では、給水(きれいな水を届ける側)と排水(使った水を外に出す側)に分けて、それぞれの設備の仕組みと構造を図でまとめました。そのうえで、ビルメンがそれぞれの設備にどう関わっているのかも紹介します。

この記事はこんな人におすすめ
  • ビルメンに興味がある未経験者
  • 配属されたばかりで、受水槽やポンプが何をしているのかわからない新人ビルメン
  • ビル管理士の「給水・排水」の分野を、現場のイメージとセットで覚えたい人
目次

そもそも給排水設備って何?

給排水設備は、ビルの中で「水」を扱う設備の総称です。ざっくり分けると、次のようなものがあります。

  • 給水設備:水道の水を、各階の蛇口やトイレまで届ける設備(受水槽・ポンプ・配管など)
  • 給湯設備:お湯をつくって届ける設備(電気温水器・給湯器など)
  • 排水設備:使った水や雨水を、下水道まで流す設備(排水管・排水槽・排水ポンプなど)
  • 通気設備:排水がスムーズに流れるように、排水管に空気を出入りさせる設備
  • 衛生器具:便器・洗面器・流しなど、人が直接使う器具

この記事では、この中でもビルメンが一番関わる「給水」と「排水」を中心に解説します(通気は排水とセットで紹介します)。

給水設備:きれいな水を各階に届けるしくみ

水道の水は、道路の下を通っている配水管(水道本管)から、ビルの敷地に引き込まれます。そこから各階の蛇口まで、どうやって水を持ち上げるかの違いが「給水方式」です。

まずは「受水槽があるか・ないか」で2つに分かれる

給水方式は、大きく分けると次の2グループです。

  • 水道直結方式:水道管の水を、水槽にためずに直接各階へ送る
  • 受水槽方式:水道管の水を、いったん受水槽にためてから各階へ送る

そして、それぞれがさらに2つに分かれるので、ビルでよく見る給水方式は全部で4つです。

ビルの給水方式4つ(直結直圧・直結増圧・高置水槽・ポンプ直送)

① 直結直圧方式

水道管の水圧だけで、そのまま蛇口まで水を届ける方式です。一般の住宅と同じですね。水槽もポンプもいらないので、一番シンプルです。

そのかわり、水道管の圧力だけで届く高さには限界があります。一般的には3階程度までとされていますが、何階まで直結で給水できるかは水道局(自治体)ごとに基準が違います。ビルメンが管理するような大きなビルでは、この方式だけで給水していることはあまりありません。

ヘタ・レイ

私の会社ではマンションも管理していますが、小さめのマンションだとこの方式を採用していますね。なお、水圧が高い地域なら5階くらいでもいけます。

② 直結増圧方式

水道管の途中に増圧ポンプ(ブースターポンプ)を付けて、足りない圧力を足して上の階まで送る方式です。受水槽がいらないので、水槽の清掃や水質の心配が少なく、設置スペースも節約できます。

対象になる建物は自治体によって違いますが、10階程度や15階程度までを目安にしているところが多いです。ただし、病院・ホテル・学校など、断水したときの影響が大きい建物や、一時的にたくさん水を使う建物は、受水槽方式が望ましいとされています。

直結増圧方式で大事なのが逆流防止器です。ビル側の水が水道管に逆流すると、周りの家の水道まで汚れてしまうので、増圧ポンプの手前に減圧式逆流防止器などを付けることになっています。増圧ポンプと逆流防止器は、1年に1回程度の定期点検を行うよう水道事業者から求められていることが多いです。

ヘタ・レイ

直結増圧は受水槽がないぶん、停電でポンプが止まると上の階の水が出なくなります。
水をためておく場所がないので「断水に弱い」と覚えておくといいですね。

③ 高置水槽方式

受水槽にためた水を、揚水ポンプで屋上の高置水槽まで持ち上げ、そこから重力で各階に配る方式です。昔からあるビルでよく見かけます。

高置水槽に水がたまっているので、停電で揚水ポンプが止まっても、しばらくは水が出ます。一方で、受水槽と高置水槽の2つを清掃・点検しないといけないので、管理の手間は増えます。また、上の階ほど水槽との高低差が小さくなるので、最上階あたりは水圧が弱くなりがちです。

④ ポンプ直送方式(加圧給水方式)

受水槽にためた水を、加圧給水ポンプで直接各階に送る方式です。屋上の高置水槽がいらないので、最近のビルでよく使われています。

ポンプは配管の圧力を見ながら、使う水の量に合わせて回転数を変えたり、運転する台数を変えたりしています(インバーター制御)。ポンプが止まると即断水になるので、ポンプは予備を含めて複数台あるのが普通です。

ほかの方式:圧力水槽方式

受水槽の水を、ポンプで圧力水槽に送り込み、中の空気が押し縮められた力で各階に水を送る方式もあります。古い建物で見かけることがありますが、今はポンプ直送方式に置き換わっていることが多いです。

4つの方式をくらべてみよう

給水方式受水槽高置水槽ポンプ向いている建物
① 直結直圧×××低層の建物
② 直結増圧××増圧ポンプ中高層の建物(自治体の基準による)
③ 高置水槽○○揚水ポンプ中規模〜大規模のビル
④ ポンプ直送○×加圧給水ポンプ中規模〜大規模のビル

受水槽がある方式(③・④)は、断水や災害のときに水槽の水を使えるのが強みです。その代わり、水槽の清掃や水質管理など、ビル側でやらないといけないことが増えます。ここがビルメンの仕事に直結してくるところです。

受水槽と高置水槽のつくり

ここからは、受水槽方式で使われる水槽を詳しく見ていきます。

受水槽はなぜ必要?

受水槽をわざわざ置くのには、主に次のような理由があります。

  • ビルで一度にたくさん水を使っても、水道管の圧力が下がって周りに迷惑をかけないようにする
  • 断水や災害のときに、たまっている水を使えるようにする
  • ポンプが水道管から直接水を吸い込まないようにする
受水槽がないビルとあるビルで、近所の水の出がどう変わるかの比較図

大きさは、ビルの1日の使用水量の半分くらい、高置水槽は10分の1くらいを目安にしていることが多いです。

受水槽の構造

受水槽は、水が汚れないように、建築基準法の告示や自治体の指導要綱で構造が細かく決められています。ポイントを図にまとめました。

受水槽の構造図(六面点検・マンホール・通気管・オーバーフロー管・吐水口空間)
  • 六面点検:上・下・まわりの6面すべてを外から点検できるように、上は100cm以上、それ以外は60cm以上のすき間をあけて置く
  • マンホール:直径60cm以上。ほこりが入らないように立ち上げて、カギをかける
  • 通気管・オーバーフロー管:先端に防虫網を付けて、虫やゴミが入らないようにする
  • ボールタップ・定水位弁:水位が下がると開いて、水道の水を補給する
  • 電極棒:水位を検知して、満水警報や減水警報を出す
  • 水抜き管:清掃のときに水を完全に抜けるように、底に勾配と水抜き用のくぼみがある

この中で、ビル管理士の試験にもよく出るのが吐水口空間と排水口空間です。

  • 吐水口空間:水を入れる口(吐水口)と、あふれる高さ(オーバーフロー面)の間のすき間。水槽の水が水道管側に吸い込まれて逆流するのを防ぐ
  • 排水口空間:オーバーフロー管や水抜き管の出口と、受ける側の排水口の間のすき間。下水側の汚れた水が水槽に逆流するのを防ぐ(このように、排水管と直接つながず、すき間をあけて流すことを間接排水といいます)
ヘタ・レイ

どちらも「管と管をくっつけずに、空気のすき間をあける」ことで、汚れた水が戻ってこないようにしているんです。
シンプルですが、一番確実な逆流防止の方法なんですよね。

最近の受水槽は、FRP(強化プラスチック)やステンレスのパネルを組み立てたものが多いです。また、中に仕切りを入れて2つの槽に分けた2槽式なら、片方ずつ清掃できるので、清掃中もビルを断水させずに済みます。

機械室に置かれたFRPパネルの受水槽
FRPパネルを組み立てた受水槽。架台の上に置かれています

高置水槽と揚水ポンプの水位制御

高置水槽方式では、屋上の高置水槽の水位を見張って、揚水ポンプを自動で動かしたり止めたりしています。

FRP製の高置水槽
FRP製の高置水槽。コンクリートの基礎と架台の上に設置されています
高置水槽の電極棒による水位制御と揚水ポンプの交互運転

一般的には、高置水槽の中に長さの違う電極棒が何本か入っていて、次のように動いています。

  • 水位が下がって「ポンプ起動」の電極から水面が離れる → 揚水ポンプが運転
  • 水位が上がって「ポンプ停止」の電極に水が触れる → 揚水ポンプが停止
  • それでも水位が上がり続けたり(満水)、下がり続けたり(減水)したら → 警報を出す
高置水槽の水位制御を段階ごとに示した図(ポンプ起動・運転・停止、満水警報・減水警報)

揚水ポンプは2台あって、運転のたびに交互に使う交互運転になっていることが多いです。1台が故障しても、もう1台で給水を続けられるようにするためです。

ヘタ・レイ

満水警報が出たら「ポンプが止まらない」か「電極の不具合」、減水警報が出たら「ポンプが動かない」か「水の使いすぎ・漏水」をまず疑います。
どちらにしても、警報が出たら現場で実際の水位を見て確認するのが基本です。

受水槽まわりの法律:簡易専用水道と特定建築物

受水槽から先の設備は、水道局ではなく建物の持ち主が管理する決まりです。どんな管理が必要かは、受水槽の大きさや建物の種類で変わります。

  • 簡易専用水道:水道水だけを水源にしていて、受水槽の有効容量が10m³を超えるもの。水道法で、水槽の清掃(1年以内ごとに1回)と、国の登録を受けた検査機関の検査(1年以内ごとに1回)が義務になっている
  • 小規模貯水槽水道:受水槽の有効容量が10m³以下のもの。水道法の対象外だが、自治体の条例や要綱で管理の基準を決めているところが多い
  • 特定建築物:建築物衛生法(ビル管理法)の対象になる大きな建物。受水槽の大きさに関係なく、水質検査や残留塩素の測定、貯水槽の清掃などの基準がある(次の章で紹介)

簡易専用水道の検査は、水質を細かく分析する検査ではなく、水槽のまわりの状態や、清掃・点検の記録がちゃんと残っているかを確認するものです。点検や清掃の記録も保存しておく必要があります(保存期間は自治体の指導によって違い、5年としているところもあります)。

飲み水の水質管理もビルメンの仕事

受水槽にためた水は、放っておくと消毒の効果がだんだん弱くなっていきます。そこで、特定建築物では次のような水質管理が決められています。

項目頻度内容
残留塩素の測定7日以内ごとに1回
(実際の現場では毎日点検が多い)
蛇口の水の遊離残留塩素が0.1mg/L以上あるか確認
水質検査6か月以内ごとに1回一般細菌・大腸菌・pH値・味・臭気・色度・濁度など
消毒副生成物の検査毎年6月1日〜9月30日に1回トリハロメタン類など
貯水槽の清掃1年以内ごとに1回受水槽・高置水槽の清掃と消毒

残留塩素は、結合残留塩素で測る場合は0.4mg/L以上が基準です。また、自治体によってはもっと厳しい指導をしていて、たとえば東京都の指導基準では、色・濁り・臭い・味と残留塩素を毎日、給水系統ごとに末端の蛇口で確認するよう求めています。

残留塩素の測定は、ビルメンが日常業務としてやることがほとんどです。蛇口から水を採って試薬を入れ、色の濃さで濃度を読み取ります(DPD法がよく使われます)。測る蛇口は、水槽から一番遠い「末端」の蛇口を選ぶのが基本です。

ヘタ・レイ

残留塩素の測定は、新人ビルメンが最初に任されることが多い仕事のひとつです。
地味ですが、ビルの飲み水の安全を確認している大事な作業なんですよね。

水質検査や貯水槽の清掃は、登録を受けた専門業者に頼むのが一般的です。ビルメンは日程を調整して、テナントに断水などのお知らせを出し、当日は立ち会いをします。

排水設備:使った水を外に出すしくみ

次は排水です。給水が「きれいな水を届ける」設備なら、排水は「使った水を、臭いや汚れを出さずに外へ流す」設備です。

ビルの排水は4種類+α

ビルの排水の種類(汚水・雑排水・雨水・湧水)と排水の流れ
  • 汚水:トイレ(大便器・小便器など)から出る、し尿を含む排水
  • 雑排水:洗面所・給湯室・厨房・浴室などから出る、し尿を含まない排水
  • 雨水:屋上やベランダに降った雨
  • 湧水:地下の壁や床からしみ出てくる地下水

このほか、研究所や病院などで出る薬品を含む排水は特殊排水と呼ばれ、そのまま下水に流さず、処理してから流します。

ちなみに、「合流式」「分流式」という言葉は、建物の中と下水道で意味が違うので注意が必要です。

  • 建物の中:汚水と雑排水を同じ管で流すのが「合流式」、別々の管で流すのが「分流式」
  • 下水道:汚水と雨水を同じ管で流すのが「合流式」、別々の管で流すのが「分流式」
ヘタ・レイ

ビル管理士の試験でもひっかけとして出てきやすいところです。
「建物の中は汚水+雑排水、下水道は汚水+雨水」と覚えておきましょう。

地上の排水は重力、地下の排水はポンプ

排水は、基本的に重力で流しています。各階の器具から出た排水は、横に伸びた排水管(排水横枝管)を通って、ビルを縦に貫く排水立て管に集まり、下へ落ちて屋外の汚水ますから公共下水道へ流れていきます。

ところが、地下階の排水は、道路の下の下水管より低い位置にあるので、重力だけでは流せません。そこで、いったん地下の排水槽(ビルピット)にためて、排水ポンプでくみ上げて流しています。

排水槽(ビルピット)のつくり

排水槽(ビルピット)の構造図

排水槽は、ためる水の種類によって汚水槽・雑排水槽・湧水槽などに分かれています。東京都の指導要綱などを参考にすると、主なつくりは次のとおりです。

  • 底には吸込みピット(釜場)というくぼみがあり、そこに水中ポンプが置かれている
  • 底は、汚泥が吸込みピットに集まるように15分の1以上10分の1以下の勾配がついている
  • 排水ポンプは、予備を含めて複数台ある
  • 水位はフロートスイッチ(または電極など)で検知して、ポンプを自動で運転・停止する
  • ポンプの吐出管には逆止弁・仕切弁が付いている
  • 防臭型のマンホール(直径60cm以上)と、建物の外に直接開放された通気管がある
排水ポンプの制御盤
排水ポンプの制御盤の例。表示ランプやメーター、切替スイッチなどが並んでいます(出典:荏原製作所)

ビルピットの悪臭対策

排水槽で一番問題になるのが臭いです。排水を長い時間ためておくと腐って硫化水素が発生し、ポンプでくみ上げたときに外の汚水ますや道路の雨水ますから臭いが広がってしまいます。硫化水素はコンクリートや鉄を傷める原因にもなります。

そのため、次のような対策がとられています。

  • ポンプの停止水位をできるだけ低くして、槽の中に排水を残さない
  • ためる時間が長くなる槽には、ばっ気装置やかくはん装置を付ける
  • 厨房の排水は、グリース阻集器(グリーストラップ)で油や生ゴミを取り除いてから流す
  • 排水槽を定期的に清掃する(特定建築物では6か月以内ごとに1回)

ばっ気装置は、槽の中に空気を送り込む装置です。硫化水素は、排水の中の酸素が足りなくなったときに細菌の働きで発生するので、空気を送り込んで排水が腐るのを防ぎます。
また、かくはん装置は、槽の中の排水をかき混ぜる装置です。汚れが底に沈んでたまるのを防ぎ、排水と一緒にポンプでくみ出しやすくします。

槽の中は、硫化水素や酸素欠乏の危険がある場所です。清掃などの槽内作業は専門業者の仕事で、ビルメンが中に入ることはありません。

ヘタ・レイ

私が以前、巡回で汚水ポンプが止まらない異常に気づいた話は、下の記事で紹介しています。
排水ポンプは「動いているか」より「いつもと同じ動き方をしているか」を見るのが大事です。

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トラップと通気管:臭いを部屋に上げないしくみ

トラップと封水

洗面器や流し、床の排水口の下には、配管がU字やS字に曲がったトラップがあります。曲がった部分にたまった水(封水)がフタの役目をして、下水の臭いや虫が部屋に上がってくるのを防いでいます。

洗面台の下のSトラップ
洗面台の下のSトラップ。S字に曲がった部分に封水がたまっています
トラップの封水と、封水がなくなる5つの原因

封水の深さ(封水深)は、一般に5cm以上10cm以下とされています。浅すぎると封水がすぐなくなり、深すぎると汚れがたまりやすく流れも悪くなるからです。

なお、1つの排水の通り道にトラップを2つ続けて付ける二重トラップは、間の空気が閉じ込められて排水が流れにくくなるので禁止されています。

封水がなくなる(破封する)5つの原因

  • 自己サイホン作用:器具から一気に流した水で、封水まで引っぱられて流れてしまう
  • 誘導サイホン作用(吸い出し作用):ほかの器具からの大量の排水で管の中の圧力が下がり、封水が吸い出される
  • はね出し作用(吹き出し作用):管の中の圧力が上がって、封水が部屋側に吹き出す
  • 毛管現象:髪の毛や糸くずが引っかかり、そこを伝って封水が少しずつ流れ出る
  • 蒸発:長いあいだ水を流さないと、封水が乾いてなくなる

テナントから「なんだか下水臭い」と連絡が来たら、まず疑うのが破封です。空き部屋や、ふだん使わない床の排水口は、封水が蒸発しているだけのことも多く、水を流せば直ることもあります。

通気管の役割

排水管の中は、水が流れるたびに空気が押されたり引っぱられたりして、圧力が変わります。この圧力の変化が、さきほどの誘導サイホン作用やはね出し作用の原因です。

そこで、排水管に通気管をつないで、外の空気を出入りさせ、管の中の圧力が大きく変わらないようにしています。排水立て管をそのまま屋上まで伸ばした伸頂通気や、横枝管から通気管を立ち上げるループ通気などの方式があります。

ヘタ・レイ

排水がゴボゴボ鳴る、流れが悪い、封水がすぐなくなる、といった症状は、配管の詰まりだけでなく、通気がうまくいっていないことが原因の場合もあります。

ビルメンは給排水設備にどう関わる?

ここからは、ビルメンが給排水設備に対して実際にやっていることを紹介します。基本は「日常の監視は自分たちで、専門的な作業は業者に任せて立ち会う」という分担です。

毎日:巡回と残留塩素の測定

巡回では、給排水まわりで次のようなところを見ています。

  • 揚水ポンプ・給水ポンプの運転状態、圧力計の数値、異音・振動、軸まわりからの水漏れ
  • 排水ポンプの運転状態(止まらない、動かないなど)と排水槽の水位、悪臭
  • 制御盤に警報(満水・減水・ポンプ故障など)が出ていないか
  • トイレや給湯室の水漏れ・詰まり、天井のシミ(漏水のサイン)

これに加えて、さきほど紹介した残留塩素の測定も日常業務です。

月1回:受水槽・高置水槽の点検

受水槽や高置水槽は、月に1回程度、水槽のまわりをじっくり点検します。自治体の資料でも、貯水槽の点検は月1回行うよう勧められています。

  • 受水槽・高置水槽の水位はふだんどおりか
  • マンホールにカギがかかっているか
  • 水槽や配管から水漏れしていないか
  • 水槽のまわりに物が置かれていないか
  • 通気管やオーバーフロー管の防虫網が破れていないか

定期:清掃・検査の段取りと立ち会い

作業頻度の目安担当
貯水槽(受水槽・高置水槽)の清掃1年以内ごとに1回専門業者(ビルメンは立ち会い)
簡易専用水道の法定検査1年以内ごとに1回登録検査機関(ビルメンは立ち会い)
飲料水の水質検査6か月以内ごとに1回検査機関(ビルメンは採水の立ち会いなど)
排水槽・排水管などの清掃6か月以内ごとに1回専門業者(ビルメンは立ち会い)
増圧ポンプ・逆流防止器の点検1年に1回程度メーカー・専門業者

※頻度は、特定建築物(建築物衛生法)・簡易専用水道(水道法)の基準や、水道事業者が求めている目安です。建物によって当てはまる基準が違います。

貯水槽の清掃や排水槽の清掃は、作業中に断水したり、トイレや流しが使えなくなったりすることがあります。そのため、テナントへのお知らせ、作業時間の調整、当日の立ち会い、作業後の確認(水が正常に出るか、ポンプが正常に動くか)までが、ビルメンの段取りの仕事です。

よくあるトラブルと一次対応

給排水まわりでは、次のようなトラブルがよく起きます。

  • トイレの詰まり・あふれ:ラバーカップなどで一次対応し、直らなければ業者を手配する
  • 漏水(天井からの水漏れなど):上の階の配管や器具、空調のドレンなどを確認し、必要ならバルブを閉めて被害を広げない
  • 水が出ない・水圧が弱い:ポンプの故障や停止、受水槽の減水、バルブの閉め忘れなどを確認する
  • 満水・減水警報:現場で実際の水位を確認し、ポンプや電極、ボールタップの状態を見る
  • 排水ポンプが止まらない・動かない:排水槽の水位、フロートスイッチ、吐出側の詰まりを確認する
  • 下水臭い:トラップの破封、排水槽の臭気、配管のすき間などを疑う
  • 冬場の凍結:屋外や屋上の配管が凍って破裂すると、溶けたときに水漏れが起きる

どのトラブルでも大事なのは、自分の判断で無理をせず、状況を確認して上司に報告することです。とくに水漏れは、テナントの書類やパソコンを濡らすと大ごとになるので、スピードが求められます。

ヘタ・レイ

水まわりのトラブルは、ビルメンに来る連絡の中でもかなり多いです。
「どこのバルブを閉めれば、どの範囲の水が止まるのか」を図面で把握しておくと、いざというときに落ち着いて動けますよ。

給排水に関係する資格

給排水設備の知識が一番まとまって学べるのは、ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)です。この記事で紹介した、受水槽の構造、水質の基準、排水槽、トラップの破封、通気などは、ビル管理士の「給水及び排水の管理」の分野でそのまま出てきます。

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このほか、給排水に関係する資格には、水道の引き込み部分(給水装置)の工事に必要な給水装置工事主任技術者や、配管工事の施工管理を担当する管工事施工管理技士などがあります。ビルメンとして必須というわけではありませんが、設備の工事に関わる立場を目指すなら役に立つ資格です。

まとめ:給水は「届ける」、排水は「臭いを出さずに外へ出す」

給排水設備は種類が多く見えますが、「水をどうやって上に届けるか」と「使った水をどうやって外に出すか」の2つに分けて考えると、ぐっとわかりやすくなります。

この記事のポイント
  • 給水方式は「直結直圧・直結増圧・高置水槽・ポンプ直送」の4つ。受水槽があるかないかでまず2つに分かれる
  • 受水槽は六面点検・防虫網・吐水口空間など、水を汚さないための構造が決まっている
  • 高置水槽は電極棒で水位を見張り、揚水ポンプを自動で運転・停止している
  • 特定建築物では、残留塩素は7日以内ごと、水質検査は6か月以内ごと、貯水槽清掃は1年以内ごとに1回
  • 地下の排水は排水槽にためてポンプでくみ上げる。ためすぎは悪臭の原因。排水設備の清掃は6か月以内ごとに1回
  • トラップの封水が臭いを止めている。封水がなくなる原因は5つ
キヨシ

蛇口をひねったら水が出るのも、トイレが流れるのも、裏でいろんな設備が動いてたんやね。

ヘタ・レイ

そうなんです。
まずは自分の現場が「どの給水方式なのか」と「受水槽・ポンプ・排水槽がどこにあるのか」を覚えるところから始めてみてください!

ビルの空調設備・高圧電気設備・消防設備の仕組みは、以下の記事で解説しています。

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