ビルメンに第一種電気工事士は必要なの?法律的な観点から解説します!
今回は「ビルメンに第一種電気工事士(以下 電工一種)が必要か?」という問題について、私の考えをお話します。
なお、私は電工一種を持っていますが、試験では無く認定で取得しています。
試験合格の方と比べますと、かなり楽をして取得をしているため、資格の必要性を語るような立場ではないかもしれません。
しかし、YouTubeのリスナーさんから「電工一種を取得したほうが良いか」という質問を頻繁に受けるため、今回の記事で私の意見を確定させたいと思います。
法的な観点からの第一種電気工事士の必要性

ビルメン経験者の人が下記表を見ればわかると思いますが、電気工事士法を根拠に電工一種の必要性を考えた場合、ビルメンにとっては電工一種はほぼ不要と考えて良いかなと思います。

ビルメン未経験者の人のために説明しますと、上記表の右列にあります「一般用電気工作物」というのは、私たちが住んでいる一般住宅(アパート含む)が該当し、中央にある「自家用電気工作物」はビルメンが勤務するビル等が該当することになります。
それを踏まえて上記の表を確認すると、第二種電気工事士ではビル(自家用電気工作物)内の工事は出来ないことがわかります。
※電工二種は電気工事士法という観点から考えると、ビルメンにとっては何の意味もないのです。

電工二種はビルメンに意味が無い資格やったんですか・・。
ビルの中で電気工事をするには第一種電気工事士が必要?

さて、電工二種ではビル内の工事が出来ませんので、ビルメンには電工一種が必要になるかと思いきや、実はこれも間違いです。
先ほどの表をもう一度見て頂くと自家用電気工作物の欄に500kw未満という表記が確認できるかと思います。(中央の上部あたりです)
この数字は、そのビルの最大電力を意味しています。
500kwと言われてもピンと来ないと思いますので、私の経験で話をしますと・・。
私が今まで常駐ビルメンとして勤務してきたビルで500kw未満という物件は見たことがありません。
かなり小規模のビルも管理したことがありますが、それでも500kwを超えていました。
そのため、ビルメンが常駐するビルは基本的に最大電力500kw以上であると考えてもらって差し支えないです。
つまり、第一種電気工事士はビルメンが常駐勤務するようなビル内の電気工事に関しては対象外なのです。

じゃあ、500kw以上のビルはどうなるの?
さらに上の特殊電気工事士でもあるの?

そんな資格は存在しません笑
次に最大電力500kw以上のビルの扱い方に関して解説しますね。
最大電力500kw以上の自家用電気工作物では資格不要?
さて、先ほど電工一種は最大電力500kw以上のビルの電気工事は対象がと解説しました。
では、500kw以上のビルの電気工事をするには何が必要なのでしょうか。
実は、最大電力500kw以上のビル(自家用電気工作物)に関しては無資格で電気工事が出来ます!
というのも、電気工事士法では先ほどの表に該当する範囲内の電気工事しか法的に規制しておらず、表に記載されていない部分に関しては電気工事士法の管轄外になっています。
また自家用電気工作物の場合は、「電気事業法」という別の法律に基づき電気主任技術者を選任する必要があります。
そこで、最大電力500kw以上のビル(自家用電気工作物)は電気主任技術者が保安・管理しているため、無資格者でも電気工事をしても良いという解釈になっているそうです。
これが、法的な観点からビルメンには電工一種が不要と考える理由です。
最大電力500kw未満の自家用電気工作物を担当することになったら
仮に最大電力500Kw未満のビル(自家用電気工作物)を担当することになったらどうするか?
ビルメンの場合、巡回の部署に配属されると小規模物件を扱うことになるため、最大電力500kw未満のビルの担当をする可能性が高くなります。
この場合は、「第一種電気工事士が必要になるかも?」と思いますよね。
確かに第一種電気工事士が無いと電気工事は出来ないのですが、最大電力500Kw未満のビルでも低圧部分の電気工事に関しては先ほどの表内の下段にある「認定電気工事従事者」を取得すれば可能となります。
認定電気工事従事者は第二種電気工事士を所持していれば講習を受けるだけで取得出来る資格となっており、最大電力500Kw未満の自家用電気工作物の低圧部分の電気工事が可能になる資格です。
ビルメンが高圧部分の工事をすることはほぼありえないため、認定電気工事従事者を取得しておけば500kw未満のビルの管理を任された場合も問題ないことになります。
以下の記事では認定電気工事従事者の取得方法について解説しています。
知識的な観点からの第一種電気工事士の必要性

私は電験三種の勉強中に、腕試しのつもりで電工一種の筆記試験問題を解いたことがありますが、筆記試験に関しては電工二種と比べてかなり難易度が高いと感じました。
そのため、電験三種の勉強を開始する前の準備運動には丁度良いのかなと感じます。
転職活動においても、履歴書に電工一種が記載されていれば、面接官も「この人は一定水準の電気の知識があるな」とわかってくれるはずです。※電工二種は適当な勉強でもまぐれで受かったりしますので、電気の知識は信用できません。
以上より、知識的な観点から考えますと、電験三種を持っていない人であれば電工一種は取る価値があります。
電工二種合格→電験三種受験はアリ?
電験三種受験前の準備運動に電工一種の勉強はアリと書きましたが、昨今の電験三種の易化傾向を考えると電工二種合格後すぐに電験三種を狙うのも全然OKだと思います。
むしろ、電工一種のために貴重な勉強時間を使うなら、その時間を電験三種に充てた方が効率が良いですね。
私自身も電工二種から電験三種に挑戦して、苦労しましたが一発合格をしておりますので現実的に不可能では無い事だけはお伝えしておきます。

電工二種から、電工一種に挑戦するか電験三種に挑戦するか・・・。
自分で判断するしかないのね。
金銭的な観点からの第一種電気工事士の必要性

最後は私の大好きな資格手当の話です。
資格手当を出す会社であれば、電工二種と一種は差別化されているはずです。
つまり、お給料アップが見込めるということです!
以下の記事でビルメン資格手当の相場を公開していますが、電工二種で2000円、電工一種だと4000円となっておりました。
この金額の差はかなり大きく、電工一種を持っていると年間で5万円近く収入が増えるということになります。

5万円もあれば旅行に行けちゃうね!
第一種電気工事士は維持費がかかる
電工一種は資格を維持するために定期講習を受ける必要がある点にはご注意ください。
この講習は5年に1度受講しなくてはならず、受講しないと免状は失効します。
しかも受講料は1万円前後かかるという鬼仕様です。
資格手当が支給されない会社や、資格手当の金額が極端に低い会社の場合は、講習費用でマイナスになってしまう可能性もあるため、資格手当目的で第一種電気工事士を取得する場合は注意してください。
ただし、まともなビルメン会社であれば講習費用は会社負担になると思いますが・・。

講習代1万円は痛いね。
講習費用を出してくれるのはどんな会社?

ビルメンランキング上位の会社であれば大丈夫だとは思いますが、絶対とは約束できないですね。
>>ビルメンランキング
結論

ここまでの解説した内容から総合的に判断しますと、電工一種はビルメンにとって優先順位の低い資格だと言えます。
- 常駐ビルメンであれば法的に資格不要
- 資格が必要なビルに配属されても、認定電気工事従事者で代替えできる
- 電気の知識を得られるが、それなら電験三種を勉強した方が良い
- 5年ごとに有料講習を受けなくてはいけない。
また、免状化するのに実務経験(3年以上)も必要ですし、取得する手間に比べて見返りが少ないです。
そのため他のビルメン関連の資格を取得した方がコスパが良いです。

他にビルメン資格は色々ありますからね。
最後にもう一度お伝えしておきます。
本記事は「ビルメンに電工一種が必要かどうか」の話になりますので、他の職種に関しては一切考慮していません。
電気工事士として働いていくのであれば、電工一種は取るべき資格なのは間違いないです。