電験三種は過去問を丸暗記すれば受かる。数年前まで、そんな話をよく耳にしたと思います。
結論から言うと、過去問の丸暗記だけで受かる時期は終わりました。ただし、過去問演習が合格の中心であることは今も変わりません。変わったのは「答えを覚える」から「解き方を理解する」への比重です。
この記事では、電気技術者試験センターが公表している合格率の推移をもとに、丸暗記が通用した時期と、通用しなくなった理由、そして今の試験に合った勉強法を紹介します。数学が苦手で、丸暗記に頼ろうか迷っている方もぜひ参考にしてください。
- 平成27年の電験三種に独学で一発合格した現役ビルメン
- 過去問の使い回しが話題になった令和4年度下期以降、毎回の試験結果と受験者の声を追いかけてきた
- 合格率などの数値は、電気技術者試験センターの公表データ(2026年10月時点)で確認
先に正直にお伝えしておくと、私は以前この記事で「過去問20年分を丸暗記すれば合格できる」と書いていました。当時の試験ではそれが通用していたのですが、状況が変わったので、内容を全面的に書き直しています。
結論:電験三種は過去問丸暗記だけではもう厳しい
今の電験三種は、過去問の答えを覚えるだけでは合格ラインの60点に届きにくくなっています。理由は大きく3つです。
- 合格率がピーク時の21.2%から、13%前後まで下がっている
- 過去問の数値だけを変えた類題や、選択肢を変えた改題が出題されている
- 通常の学習範囲では見かけない問題も混ざるため、覚えた問題だけでは点数が足りない
一方で、過去問をベースにした出題が続いていることも事実です。過去問を「答えを覚える教材」ではなく「解き方を身につける教材」として使えば、今でも十分に合格を狙えます。
ヘタ・レイ過去問をやらなくていい、という話ではありません。
やり方を変えましょう、という話です。
過去問丸暗記で受かった時期があったのは本当
「丸暗記で受かる」という話には、実際に根拠がありました。令和4年度下期の試験ごろから、過去問とまったく同じ問題が多く出題されるようになったためです。
問題文から選択肢まで過去問と同一という問題が多く、計算問題も例外ではありませんでした。計算が苦手で電験三種をあきらめていた人でも、過去問をやり込めば合格できる状態だったわけです。
この時期の合格率は、次のように大きく上がっています。
- 令和4年度上期:8.3%(使い回しが目立つ前)
- 令和4年度下期:15.7%(約2倍に上昇)
- 令和5年度下期:21.2%(過去最高水準)
令和5年度からは、期間内に好きな日時を選んで受験できるCBT方式も始まりました。私自身、この時期の記事では「過去問20年分を丸暗記してCBTで受ければいい」と書いていましたし、実際にその方法で合格した読者の方もいました。
★CBT方式の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。


合格率は13%前後まで下がった【最新データ】
ところが、令和6年度に入ると合格率は下がり始め、令和7年度以降は13%前後で落ち着いています。


電気技術者試験センターの公表データは次のとおりです。
| 試験 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 令和4年度上期 | 33,786人 | 2,793人 | 8.3% |
| 令和4年度下期 | 28,785人 | 4,514人 | 15.7% |
| 令和5年度上期 | 28,168人 | 4,683人 | 16.6% |
| 令和5年度下期 | 24,567人 | 5,211人 | 21.2% |
| 令和6年度上期 | 25,416人 | 4,064人 | 16.0% |
| 令和6年度下期 | 24,547人 | 4,117人 | 16.8% |
| 令和7年度上期 | 24,766人 | 3,201人 | 12.9% |
| 令和7年度下期 | 24,176人 | 3,164人 | 13.1% |
| 令和8年度上期 | 25,127人 | 3,223人 | 12.8% |
受験者数は毎回2万5千人前後でほぼ変わっていないのに、合格者数は令和5年度下期の5,211人から、直近は3,200人前後まで減っています。受験者の層が大きく変わったわけではないので、試験そのものが丸暗記では通りにくくなったと考えるのが自然です。
とはいえ、使い回しが目立つ前の令和4年度上期(8.3%)と比べると、今の合格率はまだ高い水準にあります。過去問を軸にした出題が完全になくなったわけではない、ということです。
過去問丸暗記が通用しなくなった3つの理由
合格率が下がった背景には、出題の仕方の変化があります。受験者の声や予備校の分析を見ると、主に次の3つです。
理由①数値だけを変えた類題が出る
見た目は過去問とそっくりでも、数値だけが変えられている問題があります。答えの記号を覚えているだけだと、数値が違う時点で正解が変わってしまい、手が出ません。
TACの令和8年度上期の試験分析でも、電力の計算問題(問16・問17)が過去問と数値だけを変えた類題だったと報告されています。解き方を理解していれば得点源になる問題ですが、丸暗記では落としてしまいます。
理由②選択肢の並び替えや改題がある
令和6年度上期の試験ごろから、選択肢の順番を入れ替えたり、過去問の選択肢を一部変えたりする出題が見られるようになりました。
「この問題の答えは(3)」と番号で覚えている人ほど、引っかかりやすい作りです。選択肢の中身を理解して選べるかどうかが問われるようになっています。
理由③覚えた範囲の外から出題される
電験三種では、20年以上前の過去問からの出題や、テキストではほとんど扱われない内容の出題もあります。TACの令和8年度上期の分析でも、理論・電力・機械・法規のそれぞれで、通常の学習範囲では扱わない問題があったとされています。
受験者の間で「過去問がたくさん出た」「新しい問題ばかりだった」と感想が割れるのは、このためだと私は考えています。直近10年分しかやっていない人には、20年前の過去問も新しい問題に見えるからです。



電験三種は各科目60点で合格です。
覚えた問題だけで6割に届かなくなったのが、今の試験の一番大きな変化だと思います。
今の電験三種に合った過去問の使い方
ここからは、今の試験に合わせた過去問の使い方を紹介します。基本は「直近は理解、古い年度は見覚え、苦手分野だけ戦略的に暗記」の組み合わせです。
- 直近10年分:答えが合うだけでなく、計算の過程を自分で再現できるまで解く
- 11〜30年前の過去問:完璧に解けなくてよいので、一度は目を通して「見たことがある」状態にする
- どうしても理解できない頻出分野:理解に時間がかかりすぎる場合だけ、答えを戦略的に覚える
直近10年分は「解き方」まで身につける
最も出題に近いのは直近の過去問です。ここは答えを覚えるのではなく、なぜその式を使うのか、どの順番で計算するのかまで説明できる状態を目指してください。
解き方が身についていれば、数値を変えた類題が出ても同じ手順で解けます。理由①の対策は、これがすべてです。
なお、苦手な単元を全部つぶそうとすると時間が足りなくなります。6割取れば合格なので、どうしても手が出ない単元は思い切って捨てるのも戦略のひとつです。
11〜30年前の過去問は「見覚え」を作る
古い過去問は、すべてを解けるようにする必要はありません。一度目を通して解説を読み、「この問題は見たことがある」という状態を作っておくのが目的です。
本番で古い年度の問題が出たとき、見覚えがあるだけで落ち着いて解けます。理由③の「覚えた範囲の外」を減らすための保険だと考えてください。
「結果的に覚えてしまう」のは丸暗記とは違う
過去問を何周も解いていると、答えを自然に覚えてしまうことがあります。これは問題ありません。私も平成27年に受験したときは約12年分の過去問を繰り返し解き、本番前にはほとんどの答えが頭に入っていました。
危ないのは、最初から解き方を飛ばして答えの記号だけを覚える勉強です。解き方を理解したうえで結果的に覚えてしまうのと、理解せずに覚えるのとでは、類題が出たときの対応力がまったく違います。
数学や物理を基礎から固めたい方は、私が平成27年に一発合格したときの勉強方法も参考にしてください。


電験三種の勉強に必要な教材
教材は「直近の過去問を理解するためのもの」と「古い過去問に目を通すためのもの」に分けて考えると選びやすくなります。
まずは分野別の過去問題集を1冊
解き方を身につけるなら、分野ごとに問題が整理された過去問題集が使いやすいです。同じ分野の問題をまとめて解くと、出題パターンと解き方の共通点が見えてきます。
TACの「みんなが欲しかった!」シリーズも、テキストと過去問題集がそろっていて、解説がわかりやすいです。理解に重点を置くなら、テキストと過去問題集をセットで使うのがおすすめです。
古い年度の過去問を押さえるなら
11〜20年前の過去問をカバーするなら、電気書院の「20年間」シリーズが便利です。科目別なので4冊必要ですが、1冊ずつ買い足せます。
さらに古い年度まで目を通したい方は、以下のような過去問題集もあります。優先度は下がるので、時間とお金に余裕がある方向けです。
ただ、教材を増やしすぎるより、1冊を何周もするほうが力がつきます。まずは直近10年分を解き方まで固めてから、古い年度に手を広げてください。
複数科目を狙うならCBT方式がおすすめ
2科目以上の合格を狙うなら、CBT方式での受験がおすすめです。勉強法が変わっても、ここは以前と同じ考えです。
- 筆記方式は4科目を同じ日に受験するが、CBT方式は期間内なら科目ごとに別の日に受験できる
- 1日に1科目へ集中できるので、後半の科目で疲れて実力を出し切れない事態を防げる
- 受験日を1週間ほどずらせば、直前期に1科目ずつ集中して仕上げられる
パソコンでの解答に抵抗がなければ、積極的に使ってください。電卓の選び方も合わせて確認しておくと安心です。


令和8年度下期の電験三種の試験日程
次の試験は令和8年度下期です。電気技術者試験センターが公表している日程は以下のとおりです。
| 項目 | 日程 |
| 受験申込期間 | 2026年11月9日(月)〜11月26日(木) |
| CBT会場の予約期間 | 2026年12月7日(月)〜2027年1月7日(木) |
| CBT方式の試験期間 | 2027年2月4日(木)〜2月28日(日) |
| 筆記方式の試験日 | 2027年3月21日(日) |
申込期間は3週間ほどしかありません。受験を決めている方は、早めに申込みを済ませておきましょう。
電験三種の過去問に関するよくある質問
- 電験三種は過去問だけで合格できますか?
-
過去問を中心にした勉強で合格は十分に狙えます。ただし、答えを丸暗記するだけでは数値を変えた類題や改題に対応できないため、直近10年分は解き方まで理解しておくことをおすすめします。
- 過去問は何年分やればいいですか?
-
直近10年分は解き方まで身につけ、11〜30年前の過去問は一度目を通して「見たことがある」状態にしておくのが目安です。古い年度からの出題もあるため、直近だけでは不安が残ります。
- 今の電験三種の合格率はどれくらいですか?
-
令和8年度上期の合格率は12.8%でした(受験者25,127人、合格者3,223人)。ピークだった令和5年度下期の21.2%からは下がり、令和7年度以降は13%前後で推移しています。
- 今後、電験三種は難しくなりますか?
-
試験の難易度がどうなるかは、誰にも予想できません。難易度の予想に振り回されるより、どちらに転んでも対応できるよう、解き方を理解する勉強をしておくのが確実です。
まとめ:過去問は「覚える」から「解けるようにする」へ


この記事では、電験三種の過去問丸暗記が通用するのかを、合格率の推移とあわせて紹介しました。
- 令和4年度下期〜令和5年度下期は、過去問の使い回しで丸暗記でも受かりやすかった
- 令和7年度以降の合格率は13%前後まで下がり、丸暗記だけでは厳しくなった
- 数値を変えた類題、選択肢の改題、学習範囲外の出題が増えている
- 直近10年分は解き方まで理解し、古い年度は見覚えを作るのが今の正攻法
過去問が合格のカギであることは、今も昔も変わりません。答えを覚えるのではなく、解けるようにする。この意識に切り替えるだけで、合格はぐっと近づきます。



以前、丸暗記を勧める記事を読んで勉強していた方には申し訳ありません。
今から切り替えても十分に間に合うので、一緒に頑張りましょう!
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